11月 26th, 2014

デンマークの教育

教育関連, by admin.

 最近、新聞等で「幸福度」というのを目にする。いくつかの機関で世界の幸福度調査結果を公表している。「幸福度」というものをどのように考えるのか、その詳細は別の機会に考えるとして、まずはこの結果に関連することとして「デンマークの教育」について調べてみたところを記載する。何故、デンマークなのか。それは幸福度がどの調査結果でも上位10位に入っているということからだ。ちなみに日本はどの調査結果でも上位20位には入らない。入らないどころか50位にも入らない結果がある。日本はGDP等経済的指標では世界の上位に位置するがそのことが幸福度とは相関しないと判断しても差し支えないであろう。何故デンマークの幸福度は高く日本は低いのか。その答えを出す必要があるかどうかわかならいし、答えがでるかどうかもわからない。ただ、考えてみることで日本に必要な何か不足する何かを見いだすことに繋がればと思う。

 デンマークの教育の前にデンマークの政治の特徴を押さえておく。デンマークで何より重視されているのは住民間の討論である。行政は計画を住民に公表し住民間の討論を促す。そのために公共図書館など様々な所で計画を発信する。行政は住民からの議論にも応じる。「日本でも行われているではないか」という声も聞こえそうだ。しかし、デンマークと日本ではまるで質が違うだろう。日本のほとんどの地域のそれは「住民討論やりました。結果でました」というアリバイづくりなのだ。結論ありきの住民討論だ。「我が地域はそんなことはない」というところがあれば、それはとても良いことだ。いずれにせよデンマークの政治の根幹は「住民間の討論」なのである。

 デンマークの人口は北海道とほぼ同じ、面積は北海道のほぼ半分である。
 デンマークの教育のコンセプトは何か。
 「子どもたちが学校に行く事が楽しくなること」である。楽しさのためには何が必要か。それは、子どもたちの自主性、主体性を重視することだ。大人たちは子どもたちと対等に議論する。頭ごなしにおしつけない。教師はガイドである。子どもたちに何かを押し付けない。学校という場はデンマーク社会にとって最重要な場である。だから、学校をよりよいところにするために親も教師も行政も一致団結して協力する。協力のためにはそのための「時間」も必要だ。デンマークの労働は週37時間以内と法律で決められている(この範囲を上回るかどうかは本人の意志次第)。そのうち教師は25時間以外は学校に拘束されずに仕事ができる。つまり、子どもたちと大人たちの交流する時間、子どもたちのことに関する大人同士の交流する時間が確保できるということである。
 
 「教育とは何か」1840年代の頃、デンマークの社会や教育に大きな影響を与えたと言われているグルントヴィは国の教育を批判した。当時のデンマークの義務教育は国家のための人づくりをめざし、知識を注入し訓練するだけのものであったが、そのような教育は生徒のやる気を失わせるだけだと主張したのである。生きた言葉のやりとりを通して、自覚した多数の市民が育って国政を担っていかなければ、民主主義は形骸化すると主張したのである。「生きた言葉のやりとり」「自覚した多数の市民」。21世紀に入って日本が一旦掴みかけてはまた忘れ去ろうとしていることをデンマークでは約200年前に考え始め、そして具体的な事が成されていたのだ。

 デンマーク政府のグローバル経済視点からの教育政策は「新たなアイディア、新たな問題解決への手法、これらの創造」である。端的には世界の中で違うことをやろう、発信しよう、ということなのだ。そういう違うことは個々の個性から生み出されるのだ。だから、個性を伸ばす事、個々の主体性を重視することが何より尊重されるのだ。

 アンデルセン童話 「マッチ売りの少女」は日本でも多くの人が知る童話だと思う。1848年、ちょうど上記のグルントヴィの主張と同時期に発表された。クリスマスの夜、温かな暖炉でくつろぐ家族がいる一方、マッチの火が消えるとともに天国へ行った少女。デンマークの国の政治の根本に、このようなことがあってはならないという思いがあるということだ。

 デンマークの幸福度が何故高いか。その一つとして私は次のことを思う。国民1人1人が子どものころから独りの個性ある人間として尊重され、1人1人の力が発揮されることを重視する社会。そのための教育のある社会という点だ。日本は子どもたちへのインプット(入力)のことしか考えていないのではないのか。与えたカリキュラムを優秀にこなした人だけを重んじないか。子どもたちを支える教師、親に時間のゆとりはあるといえるのか。

 「教育」というテーマはメディアにも大きく関係するので取り上げた。
 

<参考文献>
・デンマークの教育に学ぶ 江口千春 著
・よくわかる世界の地方自治制度 竹下 譲 著

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