ネットにおける文字を介したコミュニケーションで相手を傷つける単語を用いてしまい、それがもとで交友関係が悪化するケースが子どもたちの間で増えているようで、それを防止するための機能が子ども用携帯端末(携帯電話やスマートフォンのこと)に搭載されたというニュースがあった。文書を作成する際に例えば「バカ」という単語を入力すると「その単語は○○という理由でよろしくない」という旨のメッセージを画面に表示させるというものである。紹介されていた単語には他に「アホウ」「ウザイ」などがあった。
さてこの機能は子どもたちにどのような影響を及ぼすのであろうか。「”アホウ”という言葉はなるべく使わないほうはいいのだな」と携帯端末の発するメッセージで認識していくのだろうか。親が相変わらず使っているならば、それは親が悪いのだと子どもたちは思うのであろうか。
この機能一見便利なようだが、何か欠けているのではないだろうか。IT機器の使用にあたり、やってはいけないことをITが教えてくれる。子どもたちがこのことに慣れっ子になったらどうなるだろうか。使うにあたり、相手のことを考えてとか、その時の状況を考えてとか、そういう思考や判断に弱くなる可能性が考えられるのである。「アホウ」という言葉、関係ない人に言ったら問題になるだろうが、親しい友人に言わなければならない時に言う事が妥当な場合もあるだろう。言葉はデジタルで処理できるものではない。その時その時の感情や状況で使われ方や意味合いが違ってくるのである。言葉を考えるのも、その言葉を読んで理解するのも人間の頭と心であるはずだ。ところが、そこにITが刺さり込んでくる。ITに何かのジャッジを任せ、自分自身は考えない。そんなことがあたりまえになったなら人と人の関係は殺伐とし、大げさにいえばコンピュータに人間社会が制御されるというSFの世界が現実化することを危惧する。
タイトルを「ITバランス」とした。ITは便利であるが、その使い方のバランスを誤れば人と人の関係は脆弱で殺伐としたものになりかねないということだ。様々なことがITで代替えされている。しかし、あえて代替えをしない選択も正しく行われなければならない。