9月 6th, 2014

自治体とは何だろう?

自治関連, by admin.

「自治体ってなんですか」と聞かれたらあなたはどのように答えるでしょうか。ここでいう「自治体」とは「この災害に対し各自治体ではどのような対策を」というような新聞記事の中に出てくる「自治体」のことを指します。
次のうちから「これ」と思うものを選択してください。
(1)わからない
(2)その他
(3)役所のこと
(4)地方公共団体のこと
いかがでしょうか。答えに関しては最後のほうで述べます。その前にこの答えに関することで考えてみます。

 日本では戦後、日本国憲法で地方自治に関して次のとおり定めています。
「第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」
そしてこれを受け地方自治法で次のように定義されています。
「第一条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。」

 まず、地方の自治に関して「地方公共団体」というのがあることがわかります。それではこの「地方公共団体」とは何か。「団体」ですから、何かの定義で括られた人の集団ということになります。ではどのような定義でしょうか。法律を読んで次のように概略的にまとめました。
「管轄する区域の住民が憲法で定められた人権を確保しながら生活できるよう、地方自治の本旨に基いて仕事をする人々(公務員)の集団」としました。この団体は行政職員、首長、議員、教育委員会等の各種委員会の委員等、公務員で構成されているわけです。地方公共団体には公務員ではない住民は含まれていないのです。

 ここまででわかることがあります。役所は地方公共団体の中にあるわけです。役所は地方公共団体の中で行政事務を司るところになります。その行政義務の長が首長であり、選挙で選びます。職員は選挙で選びません。行政事務に対して提案をしたり監督したりするのが議会であり、その議員は選挙で選びます。

 それではここで再び問うてみます。
「自治体ってなんですか」
 
 私がこの答えとして言える事は「日本に自治体はない、もしくはほとんどない」です。
日本で「自治体」という言葉がいつから使われたのか、どういう趣旨で使われたのかわかりません。関係の学者、図書館の司書に聞きましたが答えは得れませんでした。

「自治」を辞書で調べると次のように説明されています。

————–
じち【自治】
(1)自分たちのことを自分たちで処理すること。 「 -の精神」 「大学の-」
(2)人民が国の機関によらず自らの手で行政を行うこと。特に,地域団体による地方自治をさすことが多い。
<大辞林 第三版の解説より>
————–

この解釈で妥当だと思います。
であれば、新聞に日々掲載されている「自治体」の「自」とは何を指すのか。ここが問題です。この「自」は公務員を指すのか、それとも住民を指すのか。答えはありません。解釈はばらばらのはずです。それはどこにも明記されていないからということもあります。いずれにせよ、多くの人は「自治体って役所のことでしょ」となるでしょう。であれば自治体の「自」は公務員です。この公務員には選挙で選ばれた首長や議員もいます。が、多くの人の頭の中にイメージできる「自治体」は「行政職員のいる役所」だと思うわけです。これが私の間違ったイメージであれば謝るしかありません。

 ところで行政職員に「「自治体」の「自」とは何を指しますか?」と聞いてみたらどうでしょうか。実は聞いたことがありません。ありませんが、次のようなことが返ってくると想像します。「住民のことを指します」と。これも私の間違った想像であれば謝るしかありません。しかし、いずれにせよ、「自治体」という言葉に対するイメージ、認識は住民か公務員かによってかなり違うことは間違いないと思うわけです。少なくとも私はとても気持ち悪くて「自治体」と発したくありません。

 何故気持ちが悪いのか。そもそも「自治」は前述のとおり「自分たちのことを自分たちで処理すること」です。であれば、処理するための会則なり、法則なり、理念なり、何なりを共有してしかるべきだと思うわけです。「自治体」というならば、その「自」が共有すべき会則等があってしかるべきだと思うわけです。共有とは自分達で決めることです。地域の住民の自治体というならば住民が住民投票で決めた条例があるべきだと思うわけです。しかし、実際には公務員だけで決めた条例が存在するだけです。だから、実質的には「自治体」の「自」は公務員なのです。このへんを明確にするならば「自治体」ではなく「役治体」(役人の役)とか「公治体」(公務員の公)となります。まあこのへんは俗語の部類になりますから、結局は憲法に明記されている「地方公共団体」が名実ともに適切な表現だと思うわけです。何より憲法に表現されているのですから積極的に使えばいいわけです。

 「自治体」とは住民が住民投票で決定した自治基本条例または憲章を住民が共有するところに対して命名されるものであるというのが私の答えです。これ以外のものを「自治体」と名称して運用していくと、「自治体」に対するイメージは住民同士、住民と公務員で共有されるどころか、ますます乖離していくものと想像するのです。学者はこの乖離を食い止めるために理論を打ち出しますが、そうした理論を追求していくと、ことごとく矛盾に突き当たるのです。

 「この災害に対し各自治体ではどのような対策を」。これを受けて感じるのは役人であり住民ではないでしょう。しかし、本来は役人も住民も関係なくその自治の区域に住む人が全員感じなければならないことなのです。そこに進まないから物事が力強く未来に向かって進みません。

 住民の自治に対する創意工夫と真の自治体とは表裏一体だと思います。

 なお、前述の憲法や法律で「地方自治の本旨」と出てきます。これが何なのか学者に聞いてみてください。「団体自治と住民自治があると言われています」というようなわかるようでわからないような答えが返ってくるでしょう。本来ここに決まりはなく、本旨はそこの住民で決め共有するべきものなのです。「私たちの自治とはこういうものである」というふうにです。

文責:中山慶一

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